A Day of My Life

渡邉祐介 – ルシエシード 工房スタッフ

今回の「A Day of My Life」では、ルシエシードで働く工房スタッフ、渡邉祐介の休日に密着しました。20歳の頃からジュエリーの職人としてキャリアを重ねてきた彼は、7年前にルシエシードに入社。自宅のある千葉県鎌ヶ谷市から恵比寿にある本社まで、片道1時間半の道のりを毎日通っていた彼ですが、今年の9月から、荒川区の町屋に新しくできたルシエシードのスタジオ勤務へと変更になったため、通勤時間はドア to ドアで50分まで大幅短縮。ジュエリー製作に集中できる自社工房が完成したことで、スタッフも増員して仕事の環境はかなり充実してきました。さらに半年前から、夢だったマイホームでの新生活も開始。仕事もプライベートも存分に楽しんでいる、渡邉のリア充ぶりを少しだけ覗き見してみましょう。

アメリカンスタイルをベースに、細かいディテールにまで渡邉のこだわりが詰め込まれたマイホームは、まだまだ完成には程遠い状態とのこと。今後数年かけて、インテリアを充実させたり、庭を整えたり、やりたいことは山積みです。窓際に陣取るのは、3つの机と3つの鳥カゴ。渡邉には3姉妹の娘がいて、それぞれが1羽ずつのインコを世話しているそうです。3姉妹と3羽のインコ。ホグワーツ魔法魔術学校の生徒だったら、いいストーリーが生まれそうです。

鳥の世話をする渡邉

平日も休日も、渡邉の朝は挽きたてのコーヒーから始まる。キッチンの棚の上には、ミキサーやトースターなど、調理関係の家電が揃いますが、そのチョイスにもやはり渡邉独自のセンスがひかります。アメリカのアンティーク物が多いですが、どれもバリバリの現役選手。渡邉家では炊飯器は使わずに鍋でご飯を炊いて、お櫃に入れて保管するというオールドスクールなスタイル。余分な湿気をお櫃が吸い取ってくれるから、冷めても美味しいご飯が食べられるのだとか。山盛りのバナナは、撮影のためにわざわざ山盛りにしたわけではありません。青果市場で働くご近所さんが、いつもいろんなフルーツを山盛りでおすそ分けしてくれるそうです。

アメリカンスタイルキッチン

渡邉がジュエリーの道を意識し始めたのは、高校生のころ。当時は古着ブームの真っ只中で、彼もご多分に漏れず、アメカジの世界にどっぷりとハマったそうです。アパレルに関わる仕事につきたいと考えた渡邉でしたが、自分が物を作ることが好きで、しかも服のような柔らかい物ではなく、シルバーや革のような硬い物を使って小物を作ることが得意なことに気付き、高校卒業後は渋谷にあるジュエリーの専門学校に進学しました。卒業後はマリッジリングからシルバーまで、様々な工房を渡り歩きながら腕を磨き、最終的にルシエシードへと辿り着いたのだそうです。

コーヒーを淹れる渡邉

コザクラインコのオハナちゃんは、長女が担当する1羽。渡邉家のリビングルームにはテレビが置いてありませんが、部屋の中には常にインコたちの歌声が心地よく響き、BGMとしては申し分ありません。この部屋には他にも、カメやドジョウや川エビなどがいて、それぞれがモゾモゾと動き回っている様子は、どれだけ見ていても飽きる事はありません。

ペットのインコ

動物たちへの餌やりが一通り終わったら、今度は庭に出て植物の世話が始まります。ここではブルーベリー、レモン、イチジク、オクラ、パッションフルーツと、様々な植物を育てていますが、今一番手を焼いているのが足元の芝。簡単にやるなら、シート状の芝生を買ってきて敷きつめるだけで完成ですが、凝り性の渡邉がそんなに楽な道を選ぶわけはありません。迷わず、管理の難しい西洋芝を種から育てるというハードモードを選んだ彼のガーデニングは、まだまだ始まったばかり。手がかかればかかるほど燃えるタイプの人間には、そもそもゴールという概念は存在しません。

植物に水をあげる渡邉

小一時間庭いじりに没頭した渡邉ですが、まだまだ作業をしたりないようで、今度はリビングの脇に作ったアトリエにこもって、黙々とオリジナルジュエリーの制作を始めました。前回の「A Day of My Life」で取材した藤本のアトリエスペースと比べると、広さも道具の種類も段違い。通常は工場でしかお目にかかれないような大掛かりな機械も取り揃えているほか、流し場や換気扇も完備しており、ジュエリーの生産ラインの全てをこの部屋の中で完結できるほど、本格的なアトリエスペースとなっています。

自宅工房で作業する渡邉

また小一時間ほど作業に没頭した後に、やっとアトリエから出て来た渡邉。ちょうど注文していたギターが配達されてきたので、早速開封の儀をとり行いました。ギターケースから出て来たのは、チェリーレッドの「Epiphone Inspired by 1966 Century」。趣味でベースを弾いていた渡邉が、ギターも練習したいと思って新たに購入した物です。アトリエの横にはアップライトピアノとベースが置いてある音楽スペースもあり、楽器のラインナップも、バンドが演奏できるほど充実したようです。

届いたギターを開封する渡邉

このギターはアンプに繋がなくても音が鳴るセミアコースティックタイプ。部屋の中に立てかけてあるだけでも絵になるギターなので、演奏して楽しめるのはもちろん、こだわりのインテリアに華を添えてくれることも間違いありません。それにしても、インテリアのチョイスも、渡邉が身につけている物も、ギターも、家電も何もかも、全てが渡邉の好みで選んだ物なので、統一感と相性の良さは流石です。

ギターを手にする渡邉

この日身に着けていたネックレスとピアスはシンパシー・オブ・ソウルの物。渡邉が住んでいる地域は、その昔貝塚だった場所に位置しているため、家を建てる前には発掘調査が行われ、その際に土器で作られたイヤリングが出土したそうです。ジュエリー職人の家の下から大昔のジュエリーが出土するなんて、ジュエリーを愛し、ジュエリーに愛されし男にふさわしいロマンチックなエピソードと言えます。

※現在は後継モデルが販売中です。

渡邉愛用のピアス

渡邉が普段身に着けている愛用品の数々。仕事ではモダンで洗練されたジュエリーを世に送り出している彼ですが、プライベートな趣味としては、無骨なアメリカンスタイルを彷彿させる大振りのシルバージュエリーが好み。どれもオリジナルで製作した物ですが、このデザインがルシエシード社内で話題となり、渡邉のアイデアを元にしたリングが、シンパシー・オブ・ソウルから商品化されたこともあるそうです。時計は50年〜60年代の物と思われるハミルトンの機械式手巻き時計「ボルトン」。アメリカンクラシックなデザインが、彼のライフスタイルにさりげなくフィットしています。

渡邉愛用のアクセサリー

Photography by Junji Hirose
Edit & Text by Shingo Sano

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