「S.O.S MAG Vol.2」の制作に際して、S.O.S fpのマネージメントチームとわれわれエディトリアルチームの企画会議では、今回はただエディトリアルコンテンツを展開して情報を発信するだけではなく、なにか実際に、形になるものを制作してみたい。しかも普段S.O.S fp単独ではあえて手をつけないような、まったく新しい切り口のアイテムを提案したい。そんな思いに至りました。
実際になにを作るのか、各方面から自分たちがいま気になること、欲しいもの、あったら良いなと思うものなどを持ち寄った結果、メンバー全員が自転車乗りで、しかもそれぞれが大なり小なり、なにかしらのカスタマイズで愛車をパーソナライズしていることが判明。そこでS.O.S fpディレクターの藤本徹也は、昔同僚だった職人が独立して立ち上げたブランドで展開している、ディテールにこだわった自転車のバルブキャップをピックアップ。
これだ! 自転車乗りの自転車乗りによる自転車乗りのためのアイテム作りというアイデアを、全員が自転車乗りの企画会議では、当然ながら誰も止める者もいません。そういうわけで早速見切り発進した一行は、板橋区小豆沢にあるHATCHET METAL WORK STUDIOの山田昌之さんの元を訪れました。
ソーシャルディスタンスやリモートワークが新しいスタンダードとなったいま、われわれの足はどんどん公共の交通機関から遠ざかり、自分一人で自由に移動できる手段として、しかも(自分の呼吸以外は)CO2も排出しない自転車を選ぶようになりました。実際に街中を走っていても、最近は本当にサイクリストが増えたように思えます。それぞれが自分好みのスタイルの自転車をチョイスしているなかで、洒落た大人たちはやはり、さらにプラスアルファのパーソナライゼイションで、自分らしさをアピールしています。
タイヤやハンドルバーの色、サドルの素材など、目立つポイントはいくつかありますが、タイヤに空気をいれるバルブのキャップというパーツは、結構目に付くわりに、あまりカスタマイズをしている人を見かけないある種の盲点。ここは人とは違う自分らしさを発揮するのに、まさにうってつけのパーツではないでしょうか?
我が「シンパシー・オブ・ソウル」の世界観を詰め込んだ、シルバー素材のバルブキャップ。実際のデザインを発案する前から、メンバー全員がその豪華なコンセプトに夢中になりました。
山田さんのアトリエにショップスペースが併設されたHATCHET METAL WORK STUDIOは、外観も内装も手作り感溢れるワイルドな佇まい。アクセサリー、スケボー、自転車、フィギュア、モデルガンなど、男の趣味が一緒くたに詰め込まれたこの小さな隠れ家には、もの好きな大人たちが足繁く通っています。
シルバーや真鍮のアクセサリーをすべてハンドメイドで制作している山田さんは、藤本もその腕を認める生粋の職人。彼にしか表現できないオリジナリティ溢れるデザインも、各方面から厚い支持を獲得しています。
HATCHETでは、アメリカンカルチャーに根付いたオールドスクールなデザインの真鍮製バルブキャップを展開。このバルブキャップは一部バイクにも併用できるということで、バイク乗り好みのハードなデザインが豊富に揃います。
しかし、われわれはそこをあえてシルバーで制作することで、「シンパシー・オブ・ソウル」らしい大人の上品さを表現しながら、都会の街並みやファッションに馴染むモダンなアイテムへとアップデートしたいと考えました。自転車のバルブキャップにしては当然高くつくはずですが、そんなところにこだわるという贅沢な心意気こそが、今回われわれの心をワシ掴みにしているポイントにほかなりません。「であれば、いっそのこと思い切って、ゴールドにダイヤも入れて!」とアイデアが飛躍したことはいうまでもありませんが、そこはなんとか、やり過ぎも良くないだろうという自制心で思いとどまりました。